アリババ製造は想像以上に難しい。ベアフットサンダル開発で直面したリアル 現在、アリババを使って中国でベアフットシューズやサンダルの製造を進めています。 僕自身、中国製造については完全な素人です。 工場に問い合わせ、サンプル代を払い、英語でやり取りをしながら、少しずつ商品開発を進めています。 先日、ようやくサンダルのサンプルが届きました。 実際に履いてみると、これがかなり良かったんです。 ソールは理想に近い薄さで、歩いたときに地面の感覚が伝わってくる。自分が提案したかった「歩きながら足本来の機能を使う」という考え方にも、しっかり合っていました。 商品を見た瞬間は、 「これなら売れそうだ」 「ロゴやパッケージを整えれば、すぐ販売できるかもしれない」 と思いました。 しかし、良いサンプルが届いたからといって、すぐに本発注できるわけではありません。 今回は、アリババを使った製造で実際に感じた難しさと、そこから得た学びを共有します。 商品は良くても、初回発注のハードルは高い 靴の製造では、MOQと呼ばれる最小発注数量が大きくなりがちです。 今回提示された数量は、500足、800足、場合によっては1,000足でした。 靴の原価は、送料や関税などを含めると、1足あたり20〜25ドル程度になると考えています。 仮に500足発注したとしても、初回から150万〜200万円前後の資金が必要です。 しかも、まだ販売実績のない新商品です。 商品そのものには手応えを感じていますし、売り方のイメージもあります。それでも、最初から数百万円を投じるとなると、簡単には決断できません。 初回ロットについては、大きな利益を出せなくてもいいと思っています。 返品や広告費などを含め、最終的に赤字にならず、トントンで終えられれば十分です。 ただし、その前提には「注文した商品が、きちんと予定どおり納品されること」があります。 今回、一番大きな問題になっているのが、まさにその部分です。 工場だと思っていた相手が、実は商社だった アリババで製造先を探していると、多くの会社が自社を工場として紹介しています。 ところが、会社情報や従業員数、所在地などを調べていくと、実際には工場ではなく、商社や小規模なトレーダーであるケースがあります。 今回やり取りしていた会社の一つも、調べてみると従業員が数名程度の小さな会社でした。 自社で製造しているのではなく、顧客から要望を聞き、それを提携工場へ伝える仲介会社である可能性が高そうです。 商社を通すこと自体が悪いわけではありません。 むしろ、こちらの要望を整理し、複数の工場を動かし、品質や納期を管理してくれる優秀な商社であれば、工場と直接取引するより進めやすい場合もあります。 問題は、その商社が製造を適切に管理できる相手なのかどうかです。 今回の相手とは、この点でかなり不安を感じています。 言葉ではなく、ビジネス上の会話が噛み合わない やり取りは基本的に英語で行っています。 ただ、苦労しているのは英語力の問題ではありません。 必要な情報が、なかなか出てこないのです。 たとえば、箱に入れた場合の価格、透明な袋にした場合の価格、ロゴを入れた場合の追加料金などを聞いても、返ってくるのは、 「何個発注しますか」 という質問です。 こちらとしては、価格を見てから発注数量を決めたい。 しかし相手は、数量や仕様が決まらなければ価格は出せないと言います。 もちろん、発注数量によって単価が変わることは理解できます。 それでも、おおよその価格帯や、数量ごとの見積もりは提示できるはずです。 何を聞いても工場へ確認しなければ返答がなく、掲載されているMOQと実際に伝えられる数量が異なることもありました。 情報が間違っていることも一度ではありません。 細かな違和感が積み重なると、 「この相手に数百万円を支払って、本当に大丈夫なのか」 という不安につながります。 海外製造では、サンプルの品質だけでなく、担当者の対応や情報の正確さも重要な判断材料になります。 対応が良くても、納期を守るとは限らない 別の会社とも並行してやり取りをしています。 こちらの担当者は非常にコミュニケーションが丁寧です。 こちらの状況に合わせて、 「あなたの場合は、こういう方法があります」 「この仕様なら、こちらの選択肢が向いています」 と提案してくれます。 やり取りだけを見れば、こちらの会社の方が圧倒的に安心できます。 ところが、その会社はサンプルの納期が大幅に遅れています。 当初は2週間程度で完成すると言われていたものが、1か月以上経っても届かない。 何度もこちらから状況を確認しなければ、進捗もわかりません。 つまり、海外製造では、 「連絡が丁寧な会社=製造管理も優秀」 とは限らないのです。 コミュニケーションは苦手でも、工場をきちんと動かせる会社もあります。 逆に、説明は上手でも、納期や品質の管理が弱い会社もあります。 担当者の印象だけで判断するのは危険だと感じています。 工場直取引が、必ずしも正解ではない 製造では、仲介業者を挟まず工場と直接取引した方が良いという考え方があります。 確かに、工場と直接話せれば、価格が下がり、話も早く進む可能性があります。 一方で、小規模な事業者が工場へ直接発注すると、こちらで仕様を細かく決め、品質を管理し、納期を調整しなければなりません。 製造経験が少ない場合、工場との間に入って調整してくれる商社の存在は大きな助けになります。 重要なのは、工場か商社かではありません。 こちらの意図を理解し、適切な工場を選び、品質と納期を管理できる相手かどうかです。 今回の経験を通じて、取引先の形態よりも、実際の実行力を見なければいけないと感じました。 数百万円を払う前に、現地現物を確認する サロンメンバーからは、 「中国へ行って、現地の工場を見た方がいい」 という意見ももらいました。 これは本当にそのとおりだと思います。 チャットでは何十回もやり取りが必要なことでも、直接会ってサンプルを見せながら話せば、短時間で解決する可能性があります。 工場の設備、働いている人、製造工程、品質管理の方法なども、現地へ行かなければわかりません。 海外製造において、現地現物を確認する意味は非常に大きいと感じています。 特に今回は、初回発注だけで数百万円規模になります。 それだけの金額を動かすのであれば、渡航費をかけてでも確認する価値はあります。 今後は、中国の展示会や工場への訪問も検討しています。 靴の製造が盛んな福建省で、信頼できる工場やトレーダーを探すことも選択肢の一つです。 日本国内のファッション関連展示会にも、中国や海外のOEM企業が出展することがあります。 いきなりアリババだけで取引先を決めるのではなく、展示会、専門家への相談、現地訪問など、複数の方法を組み合わせる必要がありそうです。 MOQを下げて、小さく始められないか 今回のサンダルは、ロゴを入れる場合のMOQが800足と提示されています。 そこで現在、ロゴを入れなければ発注数量を減らせないか確認しています。 仮に100足程度から始められるのであれば、まずはロゴなしで販売し、お客様の反応を見る方法もあります。 最初から完璧なブランド商品を作るのではなく、商品そのものの需要を確認してから、次のロットでロゴやパッケージを整える。 これは、ひとりECにとって現実的な進め方です。 ブランドを作ることは大切です。 しかし、ロゴを入れるために大量発注し、売れずに在庫を抱えてしまっては意味がありません。 まず小さく売ってみる。 購入者の声を聞く。 改善点を見つける。 その後で、本格的なオリジナル商品にする。 できる限り、この順番で進めたいと思っています。 商品カテゴリーによって、製造条件は大きく異なる 現在、サンダル以外にもいくつかの商品開発を進めています。 その一つが、発汗を促す素材を使ったサウナシャツです。 こちらは50枚程度から製造でき、ロゴやパッケージのカスタマイズにも柔軟に対応してもらえます。 サンプル価格も安く、工場の担当者と直接やり取りができているため、比較的スムーズに進んでいます。 一方で、靴やバッグはMOQが大きく、初期費用も高くなりやすい。 同じ中国製造でも、商品カテゴリーによって条件はまったく異なります。 「中国なら少量で安く作れる」と一括りに考えてはいけません。 素材、金型、縫製工程、サイズ展開、設備などによって、必要な数量も費用も変わります。 商品開発では、作りたいものだけでなく、その商品が小規模事業者でも現実的に製造できるカテゴリーなのかを見極める必要があります。 生活に馴染む商品でなければ、続かない 商品を考えるときに大切にしているのが、自分の生活に馴染むかどうかです。 足のケア用品には、カッサや筋膜リリース用品など、さまざまな商品があります。 使えば良いとわかっていても、毎回「使わなければ」と意識しないと続かないものも多い。 一方、靴やサンダルは、日常的に歩く中で自然に使えます。 特別なケアの時間を作らなくても、履いて散歩することで足を使える。 だからこそ、僕が提案したい考え方には、スニーカーよりもサンダルの方が合っているのではないかと感じています。 売れるかどうかだけではなく、お客様の生活の中で自然に使い続けられるか。 これは商品選びにおいて、とても重要な視点です。 うまくいかないのではなく、まだ道の途中 今回の製造は、正直なところ、思っていたようには進んでいません。 良いサンプルが届いたのに、取引相手への不安が残る。 信頼できそうな会社は、納期が遅れる。 工場だと思っていた会社が、実は商社だった。 本発注目前だと思っていたのに、取引先探しからやり直す可能性も出てきました。 ただ、これは失敗ではありません。 まだ道の途中です。 サンプル代を払い、やり取りに時間を使い、遠回りをしながら、自分の中に製造の判断基準が少しずつ蓄積されています。 何を確認するべきか。 どんな会社を避けるべきか。 MOQはどこまで交渉できるのか。 現地へ行くべきタイミングはいつなのか。 こうした感覚は、実際にやってみなければ身につきません。 ものづくりは難しい。でも、やはり面白い 中国製造は、簡単ではありません。 特に、ひとりECが初めて取り組む場合、わからないことばかりです。 ただ、思い描いていた商品が少しずつ形になり、自分で使ってみて「これは良い」と思えた瞬間には、大きな面白さがあります。 完成品を仕入れて販売するだけでは得られない経験です。 今回のベアフットサンダルについても、簡単には諦めるつもりはありません。 取引先を見直し、工場を探し直し、必要であれば中国へも行く。 ロゴなしの小ロットから始められるなら、その方法も試す。 思いどおりに進まないことを前提に、一つずつ前へ進めていきます。 ひとりECの商品開発は、派手な成功の連続ではありません。 むしろ、小さく失敗し、学び、修正することの連続です。 その過程も含めて、ものづくりなのだと思います。 音声はこちら▶︎