ひとりECはLPにこだわれ。CVRを0.6%から3%に伸ばした考え方 広告を出しているのに、思ったほど商品が売れない。 そんなとき、広告クリエイティブばかりを改善しようとしていないでしょうか。 もちろん、広告の画像や動画、コピーは重要です。しかし、広告をクリックしたお客様が最終的に商品を買うかどうかは、遷移先のLPで決まります。 今回は、身長160cm前後の男性に向けたアパレルブランドを運営する鈴木さんと、LPの改善や、ひとりECにおけるリソース配分について対談しました。 鈴木さんは、オリジナルTシャツのLPを作り込んだことで、コンバージョン率を約0.6%から約3%まで伸ばした経験があります。 その背景にあったのは、単にデザインのきれいなページを作ることではありません。 「お客様に考えさせない」 「専門的な事実を、お客様が理解できる言葉に変える」 「自分がやるべきことを絞る」 という、ひとりECにとって非常に重要な考え方でした。 情報量が多くても、すごさが伝わるとは限らない 今回、僕が制作している商品のLPを鈴木さんに見てもらいました。 健康や栄養に関する情報をかなり詳しく掲載していたのですが、鈴木さんから返ってきたのは、率直な感想でした。 「食物繊維が何グラムと書いてあっても、それが多いのか少ないのか分からない」 これは、非常に重要な指摘です。 商品を販売する側は、その数字がどれほど優れているかを知っています。 たとえば、食物繊維が5グラム入っているとします。 販売者側は、成人が1日に摂取したい量との比較から、十分な量だと理解できます。しかし、お客様がその基準を知らなければ、「食物繊維5グラム」という情報だけを見ても、価値を判断できません。 つまり、事実をそのまま掲載するだけでは足りないのです。 「1日に必要な量の約4分の1」 「1食で摂りたい量を補える」 といった形で、お客様が普段の生活に置き換えて理解できるようにする必要があります。 数字を出すのであれば、その数字が何を意味するのかまで説明する。 これが、分かりやすいLPを作る基本です。 「7オンス」と書いても、お客様には伝わらない 鈴木さんのブランドでは、Tシャツを販売しています。 アパレル業界の人であれば、「7オンス」と聞けば、生地の厚さや着心地をある程度イメージできます。 しかし、一般のお客様にとっては、 「7オンスって何?」 という状態です。 そこで必要になるのが、お客様の言葉への変換です。 「7オンスの生地です」と伝えるのではなく、 「透けにくい、しっかりとした厚手の生地」 「1枚でも安心して着られる生地感」 と表現する。 販売者は事実を書きたくなります。 一方、お客様が知りたいのは、その事実によって自分にどのようなメリットがあるかです。 成分名や専門用語、製法、数値を並べること自体が悪いわけではありません。ただし、それだけではお客様に価値が届きません。 言葉、グラフ、イラスト、比較表などを使いながら、何も考えなくても商品の良さが理解できる状態を作ることが大切です。 売れるLPは「脳死で理解できる」 今は、世の中に情報があふれています。 お客様は、すべての広告や商品ページを丁寧に読み込んでくれるわけではありません。 むしろ、多くの人はできるだけ頭を使わずに、 「なるほど」 「これは自分に良さそう」 「この商品なら悩みを解決できそう」 と理解したいと思っています。 言い換えると、売れるLPは、お客様に解読作業をさせません。 専門知識がなくても分かる。 長い説明を読まなくても要点がつかめる。 数字の意味を自分で計算しなくても、すごさが分かる。 この状態を作ることが、LP制作では重要です。 情報量を減らすことだけが正解ではありません。 必要な情報を残しながら、理解するための負担を減らすことがポイントです。 ターゲットが違うなら、LPを分ける 今回の対談では、LPのファーストビューで何を訴求するかという話にもなりました。 たとえば、同じ栄養補助食品であっても、購入する理由は人によって違います。 ダイエットをしたい人。 食事を用意するのが面倒な人。 忙しい朝でも栄養を摂りたい人。 健康には気を使いたいけれど、細かい栄養管理まではしたくない人。 これらを一つのLPですべて拾おうとすると、メッセージがぼやけます。 広告や記事では「忙しい朝の栄養補給」と伝えているのに、遷移したLPの冒頭で突然「ダイエット」を強く訴求していたら、お客様は違和感を覚えます。 「自分向けの商品だと思ったけれど、違ったかもしれない」 そう感じた瞬間に、離脱が起こります。 そこで有効なのが、訴求軸ごとにLPを作る方法です。 ダイエット向けのLP。 忙しい人向けのLP。 美容や健康維持に関心がある人向けのLP。 商品の基本情報やカートは共通でも、ファーストビューや説明の順番、使用シーンを変えることで、それぞれのお客様に合ったページを作れます。 Shopifyではページテンプレートやセクションを複製できるため、基本となるLPを一つ作れば、訴求部分だけを変更して複数のページを展開できます。 一つのLPにすべてを詰め込むのではなく、入口に合わせて受け皿を変える。 これは、広告とLPの一貫性を高めるうえで非常に有効です。 古着販売からオリジナル商品へ 鈴木さんは、もともと古着を販売していました。 ブランドのコンセプトは、身長160cm前後の男性に向けた服です。 小柄な男性は、一般的な服や古着を買おうとしても、丈やサイズが合わないことが少なくありません。 そのため、仕入れた古着を一着ずつサイズ直しし、商品ごとに販売ページを作っていました。 売上は立っていましたが、古着は基本的に一点物です。 一着売れるたびに、また仕入れ、直し、撮影し、新しい商品ページを作らなければなりません。 これでは、事業を大きくするのが難しい。 そこで、リソースをオリジナル商品の開発と、一つのLPに集中させることにしました。 そうして生まれたのが、小柄な男性がきれいに着られるオリジナルTシャツです。 初めて本格的にLPを作ったため、完成までには約1か月かかったそうです。 しかし、その結果、古着販売時代には約0.6%だったコンバージョン率が、約3%まで上がりました。 商品、価格、ターゲット、LPがうまく噛み合えば、売れ方は大きく変わります。 鈴木さんは、この経験から「良いものを作り、きちんと伝えること」の強さを実感したと話します。 ひとりECが見るべき数字はCTRとCVR 鈴木さんは、ひとりECの重要なKPIとして、主に次の二つを挙げています。 一つは、CTRです。 広告がどれだけクリックされたかを示す数字であり、広告クリエイティブの良し悪しが影響します。 もう一つが、CVRです。 LPを訪れた人のうち、どれだけの人が商品を購入したかを示す数字です。 どれほど広告のクリック率が高くても、LPに問題があれば購入にはつながりません。 広告費を10万円、20万円と使って多くの人を集めても、LPに大きな穴が空いていれば、そこからお客様が漏れていきます。 だからこそ、広告を強くするだけでなく、その受け皿となるLPを強固にしておく必要があります。 広告クリエイティブでクリックしてもらい、LPで納得してもらう。 この二つが揃って、初めて広告費が売上に変わります。 利益を増やすなら、広告効率を上げる ひとりECの利益構造を考えると、簡単には変えられない費用が多くあります。 商品の原価。 自分の生活を支えるための人件費。 家賃やシステム利用料などの固定費。 これらを極端に削るのは難しいものです。 一方、広告費は、運用の仕方によって売上に対する割合が変わります。 広告費率が30%かかる状態と、10%で済む状態では、手元に残る利益が大きく変わります。 広告の費用対効果を高めるためには、 商品そのものを良くする。 適切な価格を設定する。 広告クリエイティブを改善する。 LPのコンバージョン率を上げる。 この組み合わせを整えていくしかありません。 LP改善は、見た目をきれいにする作業ではありません。 事業の利益率を改善する仕事でもあるのです。 SNSをやらないという選択 ECを運営していると、 「Instagramを更新しなければ」 「ショート動画を作らなければ」 「毎日発信しなければ」 と考えがちです。 もちろん、SNSは重要です。 商品を知ってもらったり、ブランドへの信頼を補強したりする役割があります。 しかし、ひとりECでは使える時間も体力も限られています。 鈴木さんは、SNSに力を入れる代わりに、商品とLPにリソースを集中させました。 SNSを頑張ることで、LPや商品開発に使う時間がなくなるのであれば、自分が最も成果を出せる場所に振り切る。 SNSをほとんど運用していなくても、LPのコンバージョン率が高く、利益が出ているのであれば、現時点ではそれで問題ありません。 将来的に人を雇い、リソースが増えた段階でSNSを強化するという選択もできます。 大切なのは、一般的な正解をすべて実行することではありません。 自分の事業にとって、今どこに時間を使うのが最も効果的なのかを見極めることです。 SNSは「集客の主役」ではなく「補完」でもいい 今回の対談では、SNSを完全に否定しているわけではありません。 LPを徹底的に改善できる人は、決して多くありません。 細かな数字を見ながら、何度もページを修正し、広告との一貫性を整えていく作業は、簡単ではないからです。 そこまでLPをやり切れない場合、SNSでブランドへの理解や信頼を補うことで、コンバージョン率が改善することもあります。 つまり、LPとSNSのどちらが絶対的に正しいという話ではありません。 LPだけで十分に売れる仕組みを作れるのであれば、LPに集中する。 LPだけでは伝えきれない部分があるなら、SNSで補完する。 自分の得意不得意や、現在のリソースに合わせて選ぶことが重要です。 新商品は、お客様に聞いてから作る 鈴木さんは、新商品の開発にも非常に合理的な方法を取り入れています。 企画中の商品をAIで画像化し、Googleフォームを使って既存のお客様にアンケートを実施する方法です。 候補となる商品画像を見せながら、 「必要ない」 「少し欲しい」 「かなり欲しい」 「絶対に買いたい」 といった選択肢で回答してもらいます。 そして、「絶対に買いたい」という回答が多かった商品から開発を進めます。 鈴木さんのメールマガジン登録者は約2,000人で、アンケートには約250件の回答が集まったそうです。 回答率は10%を超えています。 ここで工夫したのが、メールの件名です。 単に「アンケートにご協力ください」と書くのではなく、 「新商品開発へのご協力のお願い」 と伝えました。 お客様を、単なる調査対象として扱うのではありません。 ブランドと一緒に商品を作る参加者として巻き込む。 そうすることで、回答したくなる理由が生まれます。 自由記述欄にも多くの意見が集まり、商品開発に役立つ具体的なヒントを得られたそうです。 感覚だけで商品を作るのではなく、購入する可能性が高い既存客に確認してから製造する。 ひとりECにとって、在庫リスクを抑えながら新商品を開発できる、非常に有効な方法です。 小さな競合ではなく、お客様の比較対象を見る 身長160cm前後の男性向けアパレルブランドは、鈴木さんのブランドだけではありません。 同じようなコンセプトを持つ小規模ブランドも複数あります。 しかし、鈴木さんは、それらのブランドを過度には意識していません。 なぜなら、お客様が実際に比較している相手は、同じコンセプトの小規模ブランドとは限らないからです。 多くの場合、ユニクロなどの大手ブランドと、デザイン、価格、品質を比較しています。 事業者側は、似た規模や似たコンセプトのブランドを競合だと考えがちです。 しかし、本当に見るべきなのは、お客様が購入時にどの商品と迷っているかです。 お客様の頭の中にある比較対象を理解しなければ、価格や商品の見せ方を正しく設計できません。 同業者を見るだけではなく、お客様が普段買っている商品を見る。 これも、競合調査で忘れてはいけない視点です。 自分が欲しい商品は、言葉に説得力が生まれる 鈴木さん自身も、身長が低いことで服のサイズに悩んできました。 だからこそ、 どこに不満を感じるのか。 どのような丈感が欲しいのか。 どんな言葉をかけられると心が動くのか。 を、自分の感覚として理解しています。 自分自身がターゲットであるため、商品開発もLP制作も進めやすいのです。 完成したTシャツは、鈴木さん自身がほぼ毎日のように着るほど気に入っているそうです。 自分が本当に欲しいものを作り、自分が納得できる品質に仕上げる。 その状態であれば、LPに書く言葉にも説得力が生まれます。 もちろん、自分がターゲットではない事業もあります。 その場合でも、お客様の声を集め、使う場面を観察し、悩みを深く理解することで、同じ状態に近づけます。 ひとりECは、全部やらなくていい 今回の対談で特に印象に残ったのは、鈴木さんが自分の事業を適切に最適化していることです。 SNSもやる。 動画も作る。 商品数も増やす。 毎日メルマガを書く。 LPも改善する。 広告も運用する。 これらを一人ですべて高い水準で行うのは、現実的ではありません。 すべてに手を出せば、どれも中途半端になります。 だからこそ、 何をやるか。 何をやらないか。 どこなら自分が成果を出せるか。 を決める必要があります。 鈴木さんは、SNSを最優先にするのではなく、商品とLP、広告の仕組みに集中しました。 その結果、コンバージョン率が改善し、事業規模は前年から大きく変わりました。 ひとりECでは、流行している施策をすべて追いかける必要はありません。 自分の事業の数字を見ながら、最も利益につながる場所に集中する。 これが、限られたリソースで成果を伸ばすための現実的な戦い方です。 まとめ 今回の対談から見えてきたLP改善のポイントは、次の通りです。 専門的な事実を、そのまま掲載しない。 数字や成分が何を意味するのか、お客様の生活に置き換えて説明する。 広告とLPの訴求を一致させる。 ターゲットや購入動機が異なる場合は、LPを分ける。 広告のクリック率だけでなく、LPのコンバージョン率を見る。 SNSをやること自体を目的にせず、自分のリソースを成果が出る場所に集中させる。 新商品は、既存のお客様に聞いてから作る。 そして何より重要なのは、LPを「情報を載せる場所」ではなく、「お客様が迷わず購入を判断できる場所」として考えることです。 事業者にとって分かりやすいページではなく、お客様にとって分かりやすいページを作る。 何も考えなくても、商品の価値が伝わる。 その状態まで磨き込めれば、同じ広告費でも、売上と利益は大きく変わります。 ひとりECだからできないのではありません。 ひとりECだからこそ、やることを絞り、最も成果につながる場所を徹底的に強くする。 LPは、その優先順位の上位に置くべき重要な資産です。 音声はこちら▶︎