ECサイトを作ったのに売れない。その原因は「商品」ではなく「集客」かもしれない 今回は、オンラインサロンメンバーとの対談内容を紹介します。 お話を伺ったのは、デザイン性の高い子ども向け帽子ブランドを運営されている清水さんです。 オリジナルの柄を一から作り、染色し、縫製して仕上げる。 単に帽子を販売するのではなく、子どもが帽子をかぶることで明るくなったり、元気になったり、笑顔になったりすることを目指してブランドを運営されています。 商品、写真、デザイン、世界観の完成度は非常に高く、百貨店や蔦屋書店などでも販売されています。 一方で、現在抱えている大きな課題がありました。 それが、自社オンラインストアの売上です。 娘のために作った帽子が、ブランドの始まりだった 清水さんが帽子ブランドを始めたのは、2022年頃です。 もともと、ご家族が陶器ブランドを経営しており、自分で商品を作り、お客様に届ける姿を身近で見て育ったそうです。 当時は、ご家族のブランドで企画や営業を担当していました。 しかし、コロナ禍を経験する中で、 「このままでいいのだろうか」 「自分の人生だから、自分が思ったことをやりたい」 「自分の力で稼ぎ、自分自身を評価してもらいたい」 という気持ちが強くなり、独立を考え始めます。 そんなとき、当時2歳くらいだった娘さんの存在が、現在の事業につながりました。 娘さんはまだ髪の毛が少なく、帽子をかぶせることが多かったものの、なかなか気に入る帽子が見つからなかったそうです。 ある日、インターネットで帽子の型紙と生地がセットになった手作りキットを見つけました。 清水さんは、それまでミシンを使った経験が一度もありませんでした。 それでもキットを購入し、自宅にあったミシンを引っ張り出して、初めて帽子を作ります。 縫い目はきれいではなく、商品として販売できるような完成度ではありませんでした。 ところが、その帽子を娘さんにかぶせると、今までとは違う反応が返ってきました。 娘さんはとても喜び、どこへ行くにもその帽子をかぶってくれたそうです。 その姿を見て、 「帽子には、子どもを笑顔にする可能性があるのかもしれない」 と感じたことが、ブランドを立ち上げるきっかけになりました。 最初から、すべて自分たちで作る必要はない ブランドを始めた当初は、自分たちですべての帽子を作ることも考えていたそうです。 しかし、立ち上げ時には課題がたくさんあります。 商品の品質を高めること。 在庫を用意すること。 販売先を開拓すること。 認知を広げること。 これらをすべて自分たちだけで進めるのは、現実的ではありません。 そこで最初は、多少コストがかかっても製造を工場に任せ、品質を担保することを優先しました。 自分たちは営業と販路開拓に集中し、まずは売上を作る。 非常に合理的な判断です。 現在は奥様も事業に加わり、ヘアアクセサリーやバッグなどの縫製を担当されています。 帽子についても、少しずつ自分たちで縫える体制へ移行している途中だそうです。 すべてを最初から内製化するのではなく、ブランドの成長に合わせて、少しずつ自分たちで作れる範囲を増やしていく。 小規模ブランドにとって、とても参考になる進め方だと思います。 生地を仕入れるだけでは、差別化できない このブランドの大きな特徴は、帽子の柄までオリジナルで作っていることです。 まず使用する生地を選び、どのような柄にするかをデザイナーと相談します。 その後、テキスタイルデザイナーに一から柄を制作してもらい、手捺染という方法で染めていきます。 一般的に販売されている生地を仕入れて帽子を作るだけであれば、比較的簡単に似た商品を作られてしまいます。 しかし、柄そのものからオリジナルで作れば、他ブランドには簡単に真似できません。 時間もコストもかかりますが、その積み重ねがブランド独自の資産になります。 商品の形だけではなく、素材や柄の段階から差別化する。 長期的にブランドを育てるうえで、非常に強い戦略です。 百貨店では売れるのに、自社ECでは売れない 現在、ブランドの商品は百貨店や蔦屋書店など、複数の店舗で販売されています。 一方で、自社オンラインストアの売上は、全体の1割にも満たない状態です。 店舗での販売は、主に委託販売です。 委託販売では、売場を増やしやすい反面、多くの在庫を各店舗に預けなければいけません。 売れ残った商品は戻ってくるため、在庫負担も大きくなります。 買取販売にすれば在庫負担は軽減できますが、店舗側の判断で値下げされる可能性もあります。 そのため、ブランドの価値や価格を守ることを考えると、必ずしも買取が正解とは限りません。 清水さんとしては、今後は店舗への依存度を下げ、オンラインストアから直接お客様に販売する比率を増やしたいと考えています。 しかし、商品は店舗で売れているのに、オンラインストアではなかなか注文が入らない。 ここが大きな悩みでした。 ECサイトを作っただけでは、誰も来ない ECサイトを開設すると、ついこのように考えてしまいます。 「商品を掲載したのだから、誰かが見つけて買ってくれるだろう」 しかし、現実は違います。 ECサイトを作っただけでは、基本的に誰も来ません。 これは、何もない場所に店舗を構えて、 「店を作ったのに、なぜお客様が来ないのだろう」 と悩んでいる状態に近いものです。 ECサイトで売れない理由を考えるときには、少なくとも二つの問題を分けて考える必要があります。 一つは、サイトに人が来ていないという「集客の問題」。 もう一つは、人は来ているけれど買われていないという「購入率の問題」です。 清水さんのブランドの場合、百貨店や蔦屋書店ではすでに商品が売れています。 商品自体に需要がないわけではありません。 オンラインストアも、写真やデザインの完成度が高く、広告を始めて間もない段階で、すでに購入が1件発生していました。 この状況から考えると、現時点で最も大きな課題は、サイトの作りではなく集客である可能性が高いと言えます。 サイトを大幅に作り直す前に、まずは人を呼び込む。 そのうえで、訪れた人がどれくらい購入しているのかを確認する必要があります。 広告費4,129円で購入1件。この広告は良いのか、悪いのか 清水さんは、対談の数日前から初めてMeta広告をスタートしていました。 当時の広告結果は、約4,129円を使い、購入が1件発生している状態でした。 この数字を見て、 「1件の注文を取るために4,129円かかっている」 と判断することはできます。 しかし、この段階で広告が良いか悪いかを判断するのは早すぎます。 広告を始めて数日程度では、Meta側の機械学習が十分に進んでいません。 購入が1件発生したことで、その購入者に近いユーザーをMetaが探し始める可能性もあります。 そのため、初期段階では一週間程度は様子を見ながら運用する必要があります。 広告費を数千円使っただけの段階では、結果が偶然大きく上下するからです。 たとえば、広告費を2万円使って、注文が1件しか入らなければ、1件の注文を獲得するための広告費は2万円です。 これでは、多くの商品で採算が合いません。 一方、2万円使って7件の注文が入れば、1件あたりの広告費は約2,857円です。 利益が残るのであれば、継続や予算拡大を検討できます。 広告を評価するときに大切なのは、感覚ではなく、事業として成立する数字かどうかです。 「広告費が高そうだから止める」 「何となく反応が悪そうだから画像を変える」 のではなく、自社が許容できる注文獲得単価を事前に決め、その数字と比較して判断します。 初期の広告は、止めるよりも並行してテストする もちろん、現在の広告をそのまま永遠に配信し続ければいいわけではありません。 目標としている注文獲得単価が2,000円から3,000円であれば、4,129円という数字は目標より高い状態です。 ただし、広告を始めたばかりなので、現在の広告をすぐに止める必要はありません。 既存の広告を一定期間動かしながら、別の画像や動画を使った広告を並行してテストする。 この方法であれば、機械学習を途中で止めずに、新しい可能性も試せます。 広告運用では、一つの広告だけを見て一喜一憂するのではなく、複数の訴求やクリエイティブを比較しながら、少しずつ勝ちパターンを探すことが大切です。 売れない商品ではなく、売れている商品をもっと売る 今回、広告から唯一購入につながっていたのは、オレンジ、青、黄色を使ったデザイン性の高いキャップでした。 この商品は、リアル店舗でも人気がある商品だそうです。 ここには非常に重要なヒントがあります。 リアル店舗で売れる商品と、インターネットで売れる商品は、まったく別物だと思われがちです。 しかし、実際には人気商品は、場所が変わっても人気になることが多いです。 商品そのものに魅力があり、すでに市場から反応を得ているからです。 そこで僕なら、この人気キャップだけに絞った広告キャンペーンを作ります。 正面から見た写真。 横から見た写真。 後ろから見た写真。 子どもが実際にかぶっている写真。 生地や柄の質感が分かる動画。 着用したときの全体像が分かる動画。 一つの商品を、さまざまな角度から見せます。 多くのEC事業者は、なぜか売れない商品を売ろうとします。 在庫が残っているから。 思い入れがあるから。 開発に時間がかかったから。 もちろん気持ちは理解できます。 しかし、ビジネスとして優先すべきなのは、すでに売れている商品をもっと売ることです。 売れる商品を伸ばして利益を確保する。 その利益と余力を使って、売れていない商品を改善する。 この順番の方が、経営としては圧倒的に安定します。 リール動画では、帽子の質感と全体像を伝える 清水さんのブランドは、Instagramのフォロワーが約2,500人おり、投稿もほぼ毎日続けています。 投稿の目的は、すぐに売上を作ることよりも、毎日発信して少しずつ知ってもらうための「種まき」だと話されていました。 この考え方はとても大切です。 一方で、今後さらにオンライン販売を伸ばすなら、リール動画の内容にも工夫できます。 ものづくりへのこだわりや製造工程を見せることも、ブランドの信頼につながります。 ただし、初めて商品を見る人が知りたいのは、必ずしも製造工程だけではありません。 帽子をかぶるとどのように見えるのか。 生地にはどのような質感があるのか。 柄の大きさはどれくらいなのか。 後ろ側はどのようなデザインなのか。 サイズを調整できるのか。 子どもが動いたときにずれないのか。 こうした購入前の疑問を、動画で解消してあげることが重要です。 特に、ビジュアルの完成度が高い商品は、難しい説明を増やすよりも、商品をきちんと見せるだけで魅力が伝わる場合があります。 実際に商品を使用している知人やインフルエンサーがいるのであれば、着用動画を提供してもらい、許可を得たうえで広告に活用する方法も有効です。 ブランド自身が発信する広告とは異なり、第三者が自然に使っている動画は、購入者にとって使用イメージを持ちやすくなります。 ギフト需要は、もっと分かりやすく伝えていい 子ども向けの帽子は、ギフトとの相性が非常に良い商品です。 出産祝い。 誕生日プレゼント。 入園や入学のお祝い。 親戚や友人の子どもへの贈り物。 実際に、清水さんのブランドでもギフト注文は多いそうです。 ところが、オンラインストアでは、ギフト対応をしていることがトップページの下部にあり、訪問者が気づかない可能性がありました。 多くのお客様は、トップページを最後まで読みません。 途中で商品ページへ移動したり、ページから離脱したりします。 そのため、購入理由になりやすい情報は、できるだけ早い段階で見せる必要があります。 「ギフトラッピング対応」 「大切な方のお子様への贈り物に」 「誕生日や出産祝いにもおすすめ」 といった情報をトップページや商品ページの目立つ位置に加えることで、購入用途を想像しやすくなります。 ECサイトでは、商品そのものの説明だけでなく、 「誰が、誰のために、どのような場面で買うのか」 を具体的に提示することも重要です。 情緒的な言葉を変えなくても、売れるブランドはある ECでは一般的に、商品の特徴やメリットを分かりやすく言葉にすることが重要です。 清水さんのサイトは、やや情緒的な表現が多く、機能や特徴を直接的に説明する文章は多くありません。 通常であれば、コピーをもう少し具体的に変える提案も考えられます。 しかし、このブランドの場合は、写真、デザイン、テキスタイル、商品の世界観がすでに高いレベルで統一されています。 そのため、大きく言葉を変えなくても、ビジュアルを適切な人に届け、商品の情報を補足するだけで売れる可能性があります。 すべてのブランドが、強いセールスコピーを使わなければいけないわけではありません。 商品の魅力が視覚的に伝わるブランドであれば、必要以上に売り込まず、写真や動画を中心に魅力を伝える方が合う場合もあります。 大切なのは、一般的な正解をそのまま当てはめることではありません。 そのブランドの商品、顧客、世界観に合った売り方を考えることです。 まとめ 今回の対談から得られる大きな学びは、ECサイトで売れない理由を正しく切り分けることです。 商品が悪いのか。 サイトが悪いのか。 人が来ていないのか。 人は来ているけれど購入されていないのか。 ここを分けずに考えると、本来は集客が問題なのに、サイトを何度も作り直してしまいます。 反対に、十分なアクセスがあるのに購入されていない場合は、広告費を増やしても成果は出ません。 清水さんのブランドは、リアル店舗ですでに売れており、商品、写真、デザイン、世界観にも強みがあります。 現時点で必要なのは、ブランド全体を作り直すことではなく、まずは集客量を増やし、十分なデータを集めることです。 そして、すでに人気のある商品を中心に、写真や動画の見せ方を増やしていく。 売れている商品を、もっと売る。 その売上を土台に、ブランド全体を成長させる。 小規模なEC事業者ほど、この順番を間違えないことが重要です。 ECサイトは、作っただけでは売れません。 しかし、すでに商品に魅力があるのであれば、あとは適切な人に、適切な方法で届けるだけです。 売れていないからといって、商品の価値まで否定する必要はありません。 まずは人を呼び、数字を集め、事実をもとに次の施策を決める。 それが、自社ECを伸ばすための第一歩です。 音声はこちら▶︎