副業6年→独立。文房具ブランド「アンドリーベ」が越境で伸びた理由 ――万年筆オタクの情熱を“設計”したD2Cの勝ち筋 「好き」を仕事にした人は強い。けど“好き”だけでは伸びない。サロンメンバー清水さん(アンドリーベ)は、万年筆を愛でる文化にド真ん中で刺さる設計をやり切り、副業から独立、海外比率が国内を超えるまで伸ばした。やったことは派手じゃない。コンセプト×プロダクト×コミュニケーションを地に足つけて磨き込んだだけ。再現性のある実践知としてまとめる。 清水さんの経歴と転機(要点) ・副業歴6年。ブログ→無在庫転売→Shopifyで女性向け文具ブランド運営 ・熱量が乗らず撤退。万年筆に出会って“沼落ち”→ブランド転換 ・アンドリーベ(Andliebe):万年筆ユーザー向けの**「守れて、眺めて、映える」**ペンケース等を開発 ・国内だけでなく米・欧・アジアに拡張。今は海外売上が国内超え 勝ち筋①:ニッチの“情緒”まで設計する ・万年筆界隈は**「並べて撮る」「コレクションを愛でる」**文化が強い(特にInstagram)。 ・そこで**機能(傷から守る)×情緒(眺めて楽しい)**を両立するプロダクトを設計。 ・レザー×経年変化=「最後のペンケースにしたい」という所有欲の文脈に合致。→ **“映える×愛でる×長く使う”**の三拍子でUGCが自然発生。 勝ち筋②:高単価×越境のロジック ・越境は送料が国内より約2,000円前後重い。低単価商材はハンデが致命傷。 ・**高単価×長期使用前提(レザー)**なら送料負担が心理的に薄まる。 ・海外は日本価格より割増でも購入(価値訴求が通っている)。→ **“価格>価値”ではなく“価値>価格”**を成立させたのが核心。 勝ち筋③:言語より伝わる“画”を作る ・LPは翻訳アプリ(例:Transcy系)で自動翻訳+動画広告7〜8割で運用。 ・100点の言語精度に固執しない。写真・動画・サイズ感で価値を伝える。 ・実ユーザーにヒアリング→「違和感ない」との定性検証も済み。→ “非言語の伝達力”を設計することでスピードを優先。 勝ち筋④:人力コミュニケーションをやり切る ・メルマガは毎日配信(英訳はChatGPT活用)。 ・フォロー・購入ユーザーへ丁寧にDM、UGCは許可取り→ストーリーで紹介。 ・泥臭い接点づくりが海外でも通用。→ テック×人力のハイブリッド運用で熱量を伝播。 勝ち筋⑤:供給体制と課題潰しの地道さ ・工場探しはメール打診→“人の良さ”で選定。個人事業主スタートでも交渉突破。 ・海外発送対応の倉庫に切替。 ・関税は商品価格に内包(一部は選択制)。 ・JETRO等に都度電話で確認し、貿易の不明点を1つずつ解消。→ 「調べて、聞いて、即対応」の現場戦闘力が積み上がりを生む。 海外で伸びた市場と示唆 ・売上構成:米国が最大、次いで欧州(特にドイツ)、シンガポール、豪州。 ・ブランド名の語感(Liebe=独語の“愛”)もドイツ圏と親和性。 ・“日本製×高品質”は十分優位。ただし差別化コンセプトが前提。→ 「日本だから売れる」ではなく、“誰に・何を・どう刺すか”が先。 清水さんの価値観(核) 「75点の商品は世に溢れている。特定の人には120点を届けるつもりで作る。」 この姿勢が価格受容・UGC・越境の壁を次々と溶かした。 これからの展開 ・海外(特に米国)強化 ・既存文具の枠を広げ、**“お気に入りの文具を持ち歩くバッグ”**など周辺カテゴリーへ水平展開 ・ただし、コア文脈(守る・眺める・映える・長く使う)を一貫させる 実装チェックリスト(再現用) 1. 文化の可視化:ターゲット界隈の撮影・投稿・保管・鑑賞行動を観察。 2. 情緒要件を仕様化:守る×眺める×映える×長く使うを製品要件に落とす。 3. 非言語勝負のクリエイティブ:動画7割以上、サイズ・使用感が一目で伝わる画。 4. 価格設計:高単価×長期使用を前提(越境送料の心理負担を相殺)。 5. 言語運用:自動翻訳+人間の定性確認、完璧主義に沈まない。 6. 泥臭い接点:毎日メルマガ/DM感謝/UGC承諾→紹介をルーチン化。 7. インフラ整備:海外発送倉庫・関税設定・決済・CSラインを先に整える。 8. 市場拡張の順序:1–2国でPMF確認→広域配信で上限突破。 9. 学習サイクル:問い合わせ→障壁特定→JETRO等に即コール→運用更新。 3行まとめ ・コンセプトは“万年筆を守れて眺められる”。機能と情緒を同時に満たす設計がUGCと高単価受容を生む。 ・非言語クリエイティブ×毎日メルマガ×人力DMで国境を越えて熱量を伝播。 ・高単価×長期使用前提+越境インフラで、海外売上が国内を超える規模に到達。 最後に(ストレートに言う) 「売れない」の多くは**“情緒の設計不足”と“やり切り不足”。清水さんは好き×設計×泥臭さ**で突破した。あなたもやれる。やろう。 音声①はこちら▶︎ 音声②はこちら▶︎