新商品の販売から撤退する三浦の基準|「売れないからやめる」の前にやるべきこと 新商品を頑張って開発して、いざ販売を始めてみた。 ところが、思っていたほど売れない。 ECをやっていると、こんな場面は少なからず出てきます。 そこで悩むのが、 「この商品、いつまで売り続けるべきなんだろう?」「どこまでやったら撤退した方がいいんだろう?」 という問題です。 今回は、新商品の販売から撤退するときに三浦が何を基準に判断しているのかについてお話しします。 先に結論を言うと、僕には「○ヶ月売れなかったら撤退」「○個売れなかったら終了」といった明確な数値基準はありません。 むしろ、ひとりECの場合は、最初から機械的な撤退ラインを作ることが必ずしも正しいとは思っていません。 僕が実際に大事にしているのは、 「自分自身がその商品を使い続けたいと思えるか」「その商品に対して熱意を注ぎ続けられるか」 という感覚です。 そして、「売れないから撤退しよう」と判断する前に、絶対に確認してほしいことがあります。 それが、 クリエイティブ → オファー → 商品 という順番で、本当に改善をやり切ったのかということです。 今回は、このあたりを詳しく解説していきます。 三浦が商品から撤退する一番の基準は「自分が使わなくなったとき」 僕自身、これまでいろいろな商品を開発して販売してきました。 その中には、今でも積極的に販売している商品もあれば、在庫がなくなったら販売を終了しようと思っている商品もあります。 たとえば、現在販売している「イートハック」という断食プロテイン。 こちらは広告やクリエイティブをかなり作り込みながら、積極的に販売しています。 なぜそこまで力を入れられるのか。 理由はシンプルで、僕自身が基本的に毎日飲んでいるからです。 もちろん、たまに飲まない日もあります。 それでも自分の生活の中に商品が入り込んでいて、「これはいい」と思って使い続けています。 一方で、クレアチンを配合したサプリメントも作りました。 クレアチン自体が話題になっていたことに加えて、僕自身も飲んでいたので、 「だったら自分で商品を作ろう」 と思って開発しました。 ところが、販売を始めてしばらくすると、僕自身が毎日使わなくなってしまった。 すると、だんだん商品に対して熱意を注げなくなってきます。 現在残っている在庫がなくなったら、この商品については販売を終了しようと考えています。 つまり、僕の場合、 「売れなかったからやめる」というより、「自分自身が使わなくなり、商品への熱量を維持できなくなったからやめる」 というケースが多いんです。 自分がヘビーユーザーになることが、ひとりECの強みになる なぜ「自分が使い続けること」をここまで重要視しているのか。 これは、僕が考える自社ECの勝ち筋と関係しています。 僕は、 自分自身が商品のヘビーユーザーになることによって、お客様にとって良質なコンテンツを作れるようになる と考えています。 毎日使っているから、 「こういうときに便利だった」「こういう使い方が良かった」「こういう人には合うと思う」「実際に使ってみて、ここが良かった」 という話がどんどん出てきます。 その体験がコンテンツになり、SNSやメルマガ、広告、商品ページなどで発信できる。 そして、その発信がお客様に届いて商品が売れる。 さらに、お客様とのコミュニケーションから新しい気づきを得て、また発信する。 この繰り返しが、自社ECでは非常に強いと思っています。 だからこそ、僕の売り方の場合は、 自分自身が継続的に使える商品であることが大前提 なんです。 自分が使わなくなった商品について毎日発信し続けるのは難しい。 「この商品をどうにかして売りたい」 という熱量も、どうしても落ちてきます。 逆に、自分が本当に好きで毎日使っている商品なら、簡単には撤退しません。 どうにかして売れる方法を探します。 本当に好きな商品なら「売れるまでやる」という考え方も必要 一般的なビジネスでは、撤退基準を事前に設定することが大切だと言われます。 もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。 特に組織で新規事業を行う場合、 「ここまで投資して成果が出なかったら撤退する」 と決めておくことは非常に重要です。 責任者の感情だけでズルズルと続けてしまうと、損失が拡大する可能性があるからです。 ただ、ひとりECの場合は少し違うと思っています。 そもそも自分が好きな商品を作って、 「これを売りたい」 と思って始めたはずです。 それなのに、最初から 「ここまで売れなかったら撤退しよう」 と考えてしまうのは、少しちぐはぐな気がします。 本当にその商品を愛せていて、どうにかして届けたいと思っているのであれば、 まずは売れるまでやってみる。 このスタンスも必要だと思います。 ただし、これは何も考えずに同じことを延々と続けるという意味ではありません。 売れないのであれば、改善する。 その改善をどこから始めるのかが非常に重要です。 売れない商品を改善するときの3つの優先順位 僕の中では、商品が売れないときの改善軸を大きく3つに分けています。 順番は、 1.クリエイティブ2.オファー3.商品 です。 なぜこの順番なのか。 単純に、変更しやすいものから変えていくためです。 1.最初に徹底的に改善するのは「クリエイティブ」 最初にやるべきなのがクリエイティブの改善です。 ここでいうクリエイティブとは、単に広告バナーだけを指しているわけではありません。 たとえば、 ・広告バナー ・動画 ・広告コピー ・訴求軸 ・SNSコンテンツ ・商品ページ ・LP ・商品のコンセプトや見せ方 など、お客様と商品の最初の接点になるもの全般です。 要するに、 「この商品を、お客様にどう伝えるのか?」 という部分です。 同じ商品でも、伝え方によって売れ方は大きく変わります。 だから、 「こういう言い方なら伝わるんじゃないか」「この悩みを切り口にしたらどうだろう」「このメリットを前面に出したらどうだろう」 と、何度も試していきます。 「クリエイティブをやり切った」と言えるくらい試したか? 僕がいろいろな事業者を見ていて感じるのは、 クリエイティブを十分改善しないまま、商品を諦めてしまう人がかなり多い ということです。 「広告を出したけれど売れなかった」「LPを作ったけれど反応が悪かった」 それだけで、 「この商品は売れないのかもしれない」 と判断してしまう。 でも、本当に売る気がある商品なら、もっとクリエイティブを改善できます。 たとえば訴求軸だけでも10個以上考えてみる。 そこから、それぞれに合わせて静止画やバナー、動画を何十個と作ってみる。 今なら生成AIもあるので、昔より圧倒的にクリエイティブを量産しやすくなっています。 さらに、反応の良かった訴求に合わせてLPや商品ページも変えていく。 ここまでやって初めて、 「クリエイティブはかなり試した」 と言えると思っています。 もちろん簡単ではありません。 正解が分からない状態で何十回も試すわけですから、途中で不安にもなります。 それでも改善を繰り返していると、売上だけではなく、広告や事業全体の投資対効果が良くなってくることがあります。 だからこそ、最初に徹底して触るべきなのがクリエイティブです。 2.クリエイティブの次に「オファー」を改善する クリエイティブをかなり改善した。 それでも、あと一歩売れない。 そこで次に考えるのがオファーです。 オファーとは簡単に言えば、お客様との取引条件です。 たとえば、 ・商品価格 ・送料 ・送料無料ライン ・セット販売 ・割引 ・キャンペーン ・購入特典 などです。 たとえば5,000円の商品を4,500円にしたことで、コンバージョン率が大きく変わることもあります。 食品ECなら、送料もかなり重要です。 商品ページを見て、 「これ、おいしそう。買ってみよう」 と思って決済画面まで進んだ。 ところが最後に1,000円の送料が追加される。 そこで購入をやめてしまう人は当然います。 だったら商品価格と送料の見せ方を変えたり、送料無料になる条件を設定したりすることで、購入率が変わる可能性があります。 重要なのは、 「送料無料にすればいい」「安くすればいい」という話ではない ということです。 自社の利益を確保しながら、お客様が最も買いやすくなる条件を探していく。 その落とし所をテストすることが大切です。 安易な値下げより先にクリエイティブを改善する ここで注意してほしいのが、 売れないからといって、いきなり値下げしないこと。 僕がクリエイティブを最初に挙げているのは、変更する負担が一番小さいからです。 クリエイティブは、営業マンで例えるなら「営業トーク」です。 商品の中身を変えなくても、 「お客様に何と言って提案するか」 は変えられます。 ところが、クリエイティブを十分試さず、 「売れないから500円下げよう」「送料無料にしよう」 とオファーから変えてしまう人は結構います。 でも、商品ページを充実させたり、SNSでコンテンツを増やしたり、広告の訴求を改善したりするだけで、価格を下げなくても売れる可能性はあります。 だから、 まず伝え方を変える。それでも足りなければ取引条件を変える。 この順番が重要です。 価格は固定されたものではない。テストしていい 価格変更について相談されることもありますが、事業主自身が価格を決めているのであれば、テストして問題ないと思っています。 僕自身、Amazonで大きく売上を作っていた7〜8年前は、かなり頻繁に価格を変更していました。 価格を変えると、コンバージョン率や在庫回転率が大きく変わります。 そのため、 「どの価格なら利益を確保しながら在庫が気持ちよく回るのか」 を探していました。 もちろん、むやみに値下げすればいいわけではありません。 既存のお客様が、 「自分が買ったときより大幅に安くなっている」 と感じれば、ブランドへの不信感につながることもあります。 値上げについても同様で、必要であれば背景をきちんと説明する。 価格や送料は聖域ではありません。 事業を継続でき、お客様にも納得して購入してもらえる条件を探すことが重要です。 3.最後に考えるのが「商品」 クリエイティブを徹底的に改善した。 オファーもいろいろ試した。 それでも売れない。 そこでようやく、商品そのものについて考えます。 なぜ商品改善が最後なのか。 すでに作ってしまった商品は在庫だからです。 商品ページなら今日変更できます。 広告バナーも作り直せます。 価格も変更できます。 でも、商品そのものを変えようと思ったら、現在の在庫をどうするのかという問題が発生します。 在庫が大量に残っているのに、 「じゃあ次の商品を作ろう」 と次々に開発していけば、キャッシュが在庫に変わっていくだけです。 だから僕は、 売れない商品の在庫を抱えたまま次の商品を作ることはおすすめしません。 まず今の商品を売り切ることを考える。 そのうえで、次は根本的に企画から考え直す。 一方、現在の商品が売れているのであれば、 「もっと良くするために次回ロットで改善しよう」 という商品改良はできます。 つまり、 商品改善は「売れないものを何とかする」ためというより、「売れているものをさらに良くする」ために行う という考え方です。 「撤退するべきか?」より「本当にやり切ったか?」を考える ここまでを踏まえると、新商品が売れないときに最初に考えるべきなのは、 「撤退ラインをどこにするか?」 ではありません。 それよりも、 「本当に自分はやり切ったのか?」 を考えた方がいいと思います。 訴求軸を10個、20個と試したのか。 バナーや動画を何十本作ったのか。 LPを改善したのか。 価格をテストしたのか。 送料を含めて、お客様が買いやすい条件を考えたのか。 キャンペーンやセット販売も試したのか。 ここまでやって、 「もう思いつくことは全部やった」 となってから撤退を考えても遅くありません。 僕がこれまで見てきた中では、撤退しなければいけないほどやり切っている人よりも、単純に手数が足りていないケースの方が圧倒的に多いと感じています。 撤退を決めた商品はどうやって売り切るのか? では、本当に撤退すると決めたら、残っている在庫をどうするのか。 僕の場合は、基本的にできるだけ早く売り切ることを考えます。 まず既存のお客様にメルマガなどで案内する。 それでも残る場合は、Amazonを活用することもあります。 たとえば通常4,500円程度で販売している商品でも、原価が500円程度なら、撤退すると決めた後はAmazonで2,000円程度まで価格を下げることもあります。 FBAの送料や販売手数料を差し引いて、利益が100円残るか残らないか。 そのくらいまで下げてでも、在庫をキャッシュに変えていきます。 実際、過去に販売していたカフェイン系のサプリメントも、自社サイトではほとんど動かなくなったためAmazon中心に切り替えました。 自社サイトでは2,640円程度の商品でも、Amazonでは1,600円前後まで下げる。 すると月に10〜20個程度売れるため、そのペースで在庫を減らしていく。 こういった方法も取っています。 ただし、既存のお客様への不義理になる値下げはしない 一方で、何でもAmazonで安売りすればいいわけではありません。 先ほどのクレアチンの商品には、気に入って継続してくださっているお客様がいます。 そういう商品を突然Amazonだけ大幅に安くすると、 「ずっと正規価格で買っていたのに」 と思わせてしまいます。 これは既存のお客様への不義理になりかねません。 そのため、商品によってはAmazonでの投げ売りをせず、現在のお客様を大切にしながら自然に在庫をなくしていく方法を選びます。 撤退するときにも、 目の前の在庫だけではなく、これまで購入してくれたお客様との関係を考える。 これは非常に重要です。 組織とひとりECでは「撤退基準」の意味が違う 最後に、撤退基準そのものについて改めて整理します。 組織で事業を行っている場合、撤退基準を設定することには大きな意味があります。 複数人が関わっていると、責任の所在が曖昧になったり、 「ここまで投資したんだから、もう少しやろう」 とサンクコストに引っ張られたりします。 だからこそ、 「この数字を下回ったら終了」「この期間で成果が出なければ撤退」 という基準を作ることは合理的です。 しかし、ひとりECの場合、それをそのまま持ち込む必要はないと思っています。 自分一人で意思決定できるのに、 「3ヶ月経ったから撤退判定会議をしよう」 のような仕事を増やしても意味がありません。 会社員時代や組織で必要だった業務が、ひとりECでも必要とは限らないんです。 むしろ、 「まだこの商品を売りたいと思っているか?」「自分自身が使いたいと思っているか?」「まだ改善案が浮かぶか?」「もう熱意を注げないと感じているか?」 という自分の感覚を判断材料にしていいと思います。 ひとりECだからこそ、自分のさじ加減や感覚を大事にできる。 これは弱みではなく、むしろ強みです。 まとめ|売れないから撤退するのではなく、やり切ってから判断する 新商品の撤退について、僕には明確な数値基準はありません。 大きな判断材料になっているのは、 自分がその商品を使い続けているか。その商品に熱意を注ぎ続けられるか。 ということです。 そして売れないときには、すぐ撤退を考えるのではなく、 クリエイティブ → オファー → 商品 の順番で考えます。 まずクリエイティブを徹底的に改善する。 次に価格や送料、セット、キャンペーンなどのオファーを改善する。 そこまでやっても売れなければ、商品そのものや企画について考える。 そして本当に撤退すると決めたら、既存のお客様との関係を大切にしながら、できるだけ早く在庫を売り切る。 新商品を出して反応が悪いと、 「この商品はダメだったのかな」 と不安になると思います。 でも、商品が悪いのではなく、単純にまだ手数が足りていないだけというケースはかなりあります。 撤退基準を考える前に、 「自分は本当に、この商品を売るためにやれることを全部やったのか?」 一度そこを考えてみてください。 ひとりECでは、組織で使われているルールを何でも持ち込む必要はありません。 自分が商品を好きで、まだ売りたいと思えているなら、改善を続ければいい。 逆に、自分自身が使わなくなり、熱意もなくなったのであれば、無理に続ける必要もありません。 その柔軟さも、ひとりECの大きなメリットだと思っています。 音声はこちら▶︎