日本茶専門店が「高単価でも選ばれる店」になるまで
春芳茶園・後藤さんと三浦の対談ログ
はじめに:
「やりたいこと × お客様の価値 × 市場価値」の真ん中をどう上げるか
今回の対談は、お茶屋「春芳茶園」の後藤さんからもらった、こんな相談から始まりました。
自分がやりたいことと、お客様にとって価値があること、市場価値。
この3つの真ん中の解像度をもっと上げたい。
背景には、
・ECなら「原価30%くらいまでは価格を上げた方がいい」という最近の三浦の話
・既存客とは違う、高単価のお茶市場を新商品で開拓したいという思い
・日本茶業界の中で、「歴史・格式・デザイン勝負」ではなく
“本質的においしくて、適正価格で、日本茶をエンタメとして楽しめる専門店” というポジションを取りたい
という流れがあります。
ここから、「高品質なお茶をきちんと高単価で売り、生産者と一緒に成長していくにはどうしたらいいか?」という話を、30分みっちり深掘りしました。
1. まず「思想をのせたオリジナル商品を1個決める」
三浦が一番最初に伝えたのは、超シンプルな結論でした。
「まず、後藤さんの“オリジナルのお茶”を1個決めて、
値段は自分で自由に決めてください。
そして、その世界観ごとちゃんと発信する。まずはそれです。」
春芳茶園には、すでにたくさんのオリジナル商品があります。
店頭の商品をECにも載せているため、原価率30%どころかもっと高い商品も多い。
その一方で、
「やりたいことが多すぎる」
「既存客の顔が浮かびすぎて、思い切ったチャレンジがしづらい」
という“選択肢の多さゆえのブレーキ”もかかっていました。
だからこそ、
「このカテゴリーでは、この商品だけを売る」
「これは“春芳茶園の思想をのせたお茶”として扱う」
という “1本の旗を立てる作業” が必要になります。
2. 差別化は「スペック」ではなく「哲学・思想」でやる
お茶の世界は、ともすると「歴史」「産地」「等級」「品種」など、
スペック勝負になりがちです。
でも、三浦はここをバッサリ切りました。
「差別化要素を“スペック”だけで考えるのは、
コモディティな商品ほど限界があります。
最後に効いてくるのは“ブランドの哲学・思想”です。」
・どんな世界をつくりたいのか
・なぜこのお茶を世の中に広めたいのか
・どういう人に飲んでほしいのか
ここを “言語化して、線引きして、約束する” ことが、
高単価商品の前提条件になります。
春芳茶園は、ほぼ全てがオリジナルブレンド。
すでに価値はあるのに、その価値が「言語化されていない」から伝わっていない。
だから、
「このお茶は“こういう思想”でブレンドしています」
「他のお茶と違うポイントは、茶葉だけじゃなく“思い”の部分にもある」
ここまでセットで伝えていく必要があります。
3. 「今のお客様」から考えると、必ずブレーキがかかる
後藤さんの中に強くあったのは、
「今の常連さんはどう思うだろう」
「急に高い商品を出したら、引かれないか」
「今まで“求めやすい価格”で売ってきた父の哲学もある」
という、既存顧客・歴史へのリスペクトでした。
この気持ちはめちゃくちゃ健全ですが、
「新しい市場」を取りに行く時には、逆に足かせになる こともあります。
「今のお客さんから逆算して商品設計をすると、
どうしても中途半端になります。
そもそも後藤さんがやりたいのは“今のお客さんではない層”へのアプローチですよね。」
なので、
・「既存客にどう思われるか」は「副産物」と割り切る
・メインターゲットは「これから出会いたいお客様」に置く
・今の常連さんがそれを見て「いいね」と思ってくれたらラッキー、くらいに構える
このマインドに切り替えることが、
“高単価ラインの立ち上げ”には避けて通れないステップ だという話になりました。
4. 「このお茶は、サービス込み込みでこういう値段です」を決める
高単価のお茶は、茶葉そのものだけではなく、
・淹れ方のレクチャー
・楽しみ方の提案
・ストーリー・背景の共有
まで含めて“商品”です。
「お茶そのもの+サービス+体験全部込み込みで、
“高いけど安い”と思ってもらえるラインを、自分で決める。
その価格を“後追い”じゃなくて、最初に決めてしまう。」
そして、
「他のお茶と何が違うんですか?」と聞かれたときに
・茶葉・ブレンドの違い
・そこに込めた思想
・買ったあとの体験(サポート・コンテンツ)
まで、きちんと説明できる状態をつくる。
ここまで設計して、初めて “単価を上げる理由” が説明できるようになります。
5. 動画・SNSは「外注任せ」ではなく、「こちらから企画を渡す」
もう1つのテーマは、
インバウンド・お茶初心者向けに立ち上げた新しいSNSアカウントの話。
・動画制作会社と組んで、英語ルビ付きのショート動画を制作
・TikTok・Instagram・YouTubeショートに展開
・ただ、現状まだ「手応えが薄い」
ここに対して三浦が指摘したのは、
「外注の動画制作会社さんは、
どうしても“お客さんのインサイト”まではわかりません。
だからコンテンツが“一般論”に寄りがちなんですよ。」
そこで出てきた提案がこれです。
・LINEで来ている質問と、そのマニアックな回答をそのまま「ネタ」にする
・「これを企画にして、動画にしてください」と外注側に渡す
・コンテンツの“芯”は、自分たちが握る
つまり、
“動画編集”は外に出してもいいけど、“企画”は手放さない というスタンスです。
6. アカウントを分ける前に、「誰とどう話したいアカウントか」を決める
「インバウンド用」「初心者向け」として、
既存とは別のアカウントを立ち上げた春芳茶園。
ただ、後藤さんの中には、
・「分けた方がいいと言われて分けたものの、これでいいのか?」
・「既存アカウントのフォロワーさんも巻き込んでいいのでは?」
というモヤモヤもありました。
ここで三浦が確認したのは、超シンプルな問い。
「このアカウントは、誰に対して、どういうコミュニケーションを取りたいのか?」
・目的が曖昧なまま分けると、ただリソースだけが分散する
・既存アカウントの世界観とズレていないなら、統一してしまっても問題ない
・むしろ「既存のお客様にも届いてほしい」内容なら、分けない方がいいケースも多い
結論としては、
・まずは既存アカウントをもっと充実させる
・動画制作会社とも、その方針で改めてすり合わせる
という方向性が見えてきました。
7. 「内側(既存客)を向くと、結果的に外側(新規)にも広がる」
ここから話は、LINE・YouTube・コミュニティ運営に広がっていきます。
三浦が何度も強調したのは、
「もっと“内側”を向きましょう。
今いるお客さんとのコミュニケーションを深くすれば、
結果的に外にも勝手に広がっていきます。」
具体的には、
・既存客向けにYouTubeロングでじっくり語る
新規獲得用だと「おっさんの長尺トークなんて誰が見るんだ」と思いがち
でも、既存のファンならむしろ喜んで見てくれる
LINEでの1対1のやりとりを、
・投稿ネタ
・動画ネタ
・ラジオネタ
に転用する
・「お客様同士が見える」場(オープンチャットなど)も検討する
こうやって “内側の熱量”をコンテンツ化して外に出す ことで、
口コミも自然に広がっていきます。
8. お茶を「難しいもの」から「やってみたいエンタメ」に変える
対談の終盤では、参加者からも面白いアイデアが出てきました。
・インバウンド向けに「急須付き」のセットにして、
家でも友人に振る舞える体験をまるごと提案する
・「絶対に立つ茶柱」だけを別売りして、お茶のエンタメとして打ち出す
など、「お茶=渋い・難しい」ではなく、
「お茶=楽しい・試してみたい」方向へのアイデア が次々と出てきました。
後藤さん自身も、
「お茶ってつまらない・難しいと思われがち」
「そこを“楽しい”“やってみたい”に変えたい」
という強い想いを持っているからこそ、
ここは今後の春芳茶園の大きなテーマになりそうです。
9. 自分の発信を「つまらない」と決めつけない
最後に三浦から、後藤さんへ、そして聞いている事業者全員へのメッセージ。
「自分の発信を“どうせつまらないだろうな”って、
自分で評価を下げる人がめちゃくちゃ多いんですけど、
面白いと思ってくれる人は必ずいます。
その人たちに向けて話せばいいんです。」
・歴史ある大先生たちと比べて、自分を過小評価しない
・「お茶の先生」としては、一般の人から見たら十分プロ
・しゃべりも熱量もある。あとは出し方と集中の問題だけ
「性格的に、とっ散らかりやすい」という自覚も含めて、
それを前提に 「集中できる環境・商品構成」を設計する ところからやっていこう、
というところで対談はまとまりました。
10. まとめ:この30分から抜き出せるポイント
対談をギュッとまとめると、こんな学びになります。
1. まずは「思想をのせたオリジナル商品を1つ決める」
└ その商品だけは、価格も世界観も“自分基準”で決める。
2. 差別化はスペックではなく「哲学・思想」でやる
└ なぜこのお茶を広めたいのか、誰に飲んでほしいのかを言語化する。
3. 既存客から逆算しすぎない
└ 新しい市場を取りに行くなら、「これから会いたい人」基準で設計する。
4. 動画・SNSは「企画はこちら、編集は外注」で主導権を握る
└ LINEでのQ&Aなど、実際のお客様とのやり取りをそのままネタにする。
5. 内側(既存客)を向くと、結果的に外にも広がる
└ 既存客向けのロング動画や濃い発信が、口コミの源泉になる。
6. 自分の発信を「つまらない」と決めつけない
└ 面白いと思ってくれる人は必ずいる。その人に届けばいい。
